小説投稿サイト「カクヨム」にて掲載されたモキュメンタリーホラー小説『近畿地方のある場所について』(著:背筋)が8月30日に書籍化されました。
※モキュメンタリーとはドキュメンタリーのように見せる表現方法を用いた作品。
作中では近畿地方のその場所を『●●●●●』と表記されています。
モキュメンタリーではありますが、
どこまでがフィクションか分からない、本当にあったのかと思わせるリアリティさがあります。
『●●●●●』は実際にモデルになった場所があるようです。
ネットでは生駒山ではいか、熊野ではないかとの推測がされています。
『●●●●●』はどこなのか調べてみました。
結論から、モデルになった場所は滝畑ダム周辺です。
作中「●●●●●」の地図
大体の地形や位置関係は以下の通りです。
・近畿地方にある南北に連なる山(呼称は統一されていないが地図を広げれば一筆書きに丸で囲める一帯)
・西と東は山を隔てて県境
・西側はダム・廃墟(保養所)・トンネル・キャンプ場・展望台(あずまや)
・東側はお札屋敷とマンション
・廃神社はダム湖の東側に位置している
「近畿地方のある場所について」のイメージ地図を作りました。
— 酒呑ルト🍶🍺 (@syuten_ruto) April 4, 2023
あくまで個人的な妄想なのでよしなに。 pic.twitter.com/zfLPIAxfbk
生駒山ではない「関西最恐スポット」
・心霊スポットは日本に500以上あり、有名どころでは多磨霊園、生駒山トンネルなど
・経費を考えると大阪、東京、福岡などの主要都市が外部ライターの取材できる場所。・心霊スポットの怪談にまつわる話は訪れる人の多さに比例し、面白半分に肝試しできる立地が有名になる。
引用元:近畿地方のある場所について 2
有名な心霊スポットに生駒山があげられていることから生駒山とは考えにくいです。
作中で心霊スポットで凸したYouTuberは関西最恐の心霊スポットと言っています。
主要都市から気軽に行けて全国区ではないが地元では有名な心霊スポットだと考えられます。
著者の実体験
作中で「山・ダム・神社」がセットで出てくるのは著者の実体験が元になっているとインタビューで明かしています。
実際の場所
著者の背筋さんは友人と一緒に住んでいるの都道府県のはずれのダムに行った際に奇妙な光景を目にします。
そのダムはとある名所でした。
これが『●●●●●』のモデルになった場所です。
『近畿地方のある場所について』の話
— 背筋:『近畿地方のある場所について』作者 (@sesujisesujises) April 16, 2023
10年以上前の話です。
物好きな友達から「台風の後の荒れたダムをみたいからついてきてくれ」と誘われました。
同じく物好きな私は友達から誘われたそのダムが自殺の名所ということを知っていたので、二つ返事で了承して、レンタカーを借りて二人で向かいました。
30分ぐらいぶらぶらとダムの周りを歩きました。
— 背筋:『近畿地方のある場所について』作者 (@sesujisesujises) April 16, 2023
ダムの片側には県道が走っていて、その県道の脇に設けられた歩道を歩いていました。
県道の山側にはいくつか家がありましたが、全て廃墟でした。
いかにも見捨てられた場所という不気味な雰囲気がなんとも楽しく、2人で写真を撮り続けていました。
※全文はこちらから読めます。
場所の特定になりそうな部分をまとめました。
・著者の住む都道府県の外れにあるとある名所のダム
・ダムの県道の山側はいくつかの廃墟
・県道の山側に古い大きい鳥居がある
・かなり長い階段で一定間隔に石灯篭
・頂上には大きい鳥居があり半分廃神社
・社務所のようなものと、神楽舞台、奥に副祭神を祭ってある祠がある
大阪のダム
角川文芸のインタビューで、「以前大阪に住んでいた私は、友人と一緒に山奥のダムに行ったんです。」と答えていました。
先述の著者の住む都道府県のはずれにあるダムは大阪にあると分かりました。
大阪にあるダムでとある名所を調べた結果、以下の2つが該当しました。
この2つのダムは大阪府と和歌山県を隔てた南北に連なる山、和泉山脈の西側に位置しています。
どちらも山に囲まれていて、関西では有名な心霊スポットです。
モデルは滝畑ダム周辺
モデルになった場所は滝畑ダム周辺です。
天神社
著者の言う神社はおそらくダムの東側にある天神社(大梵天王社)です。
⛩天神社(大阪府河内長野市)①
— 狭野の人 (@patmjgdw7294385) October 7, 2021
旧名は大梵天王社といい、神仏習合の神社です。
滝畑ダムのダム湖を見渡すことができ、スカッとする景観です😊 pic.twitter.com/X6dtr0xqyc
ダムの片側の府道に大きい鳥居があり、長い石階段が続いています。
長い階段の踊り場の両側に石灯篭、頂上に大きい鳥居、社務所と思われるものと、本殿前には舞台があり奥に副祭神を祭っている祠もあり完全に一致しています。
こちらのサイトで写真付きで詳しく紹介されています。
ダム周辺
周辺には滝畑第三トンネル”梨の木隧道”があり、大阪屈指の心霊スポットだそうです。
近くにキャンプ場もあり、展望台もありました。
周辺には休憩場所もいくつかあり、中にはベンチのある東屋のような場所ももあります。
しかし、山側の廃墟は確認できませんでした。
廃墟になった滝畑レイクパークが近くにはあり、府道の一本道をそれた場所にはいくつかの廃墟らしき家は確認できました。
本の表紙
本の表紙は実際の「●●●●●」を撮影した景色を合成して作ったそうです。
『近畿地方のある場所について』の書影がamazonにアップされています。実際に●●●●●に行って撮影した景色を合成して作っていただきました。私は怖いので行きませんでした。ぜひご覧ください。
— 背筋:『近畿地方のある場所について』作者 (@sesujisesujises) July 12, 2023
真ん中を拡大してみるとあれが見えます。(続きます)https://t.co/I1PgEKpEWq
これは滝畑ダムにある夕月橋からとった天神社のようです。
本来なら山に囲まれて見えていない神社の鳥居を合成で見えるように表紙にしたと思われます。
本日の滝畑ダムです。【8月14日】
— たきでらさん (@takihatadx) August 14, 2020
滝畑ダム上流にあります湖面にかかる夕月橋からさらに上流を撮影したものです。#滝畑ダム pic.twitter.com/r0snRpYfkO
モチーフは?
ねとらぼのインタビュー記事では、著者は作品でこだわった点でホラーが好きでいくつもの怪異をモチーフにしているとのことでした。
梅田の赤い女、リング、アクロバティックサラサラなどをモチーフにして、なおかつ怖くて嫌な動きをさせようと思って出来上がったのが「ジャンプ女」だそうです。
おそらく、作中のダムも滝畑ダムをモデルに滋賀県の”ありがとう村”などを何個か話のモチーフにして作中に落とし込んでいると思われます。
ありがとう村
滋賀県犬上郡多賀町に、通称”ありがとう村”と呼ばれているボランティアグループがあります。
「宇宙神ありがとうございます」と書かれたシールや部屋中に貼るのを推奨したり、護摩木にも書き護摩焚きの際には両手を挙げるようです。
ホームページはこちらです。(地球を守る会というブログもあります)
周辺の犬上川ダムでは「ありがとうございます」と謎の杭が刺さっています。

ありがとうございますの謎の杭、犬上ダムらへんの木材加工場にいっぱい建ってたから元ネタここかな pic.twitter.com/psSZVdsir5
— zw𓅿 (@zawasun620) October 29, 2019
事故
滝畑ダムでは事故も発生しています。
2016年にバーベキューの帰りで6人が乗った車が滝畑ダムに転落するという事故がありました。
乗っていた5人が亡くなり、生き残った1人は「記憶がない」とのこと。
事故が起こった場所は夕月橋の目の前でバーべキュー場から見晴らしのいいまっすぐな道でブレーキ痕もなかったそうです。
夕月橋での自ら命を落とす人が多いことからそのての話では、霊感が強いとダムに引きずりこまれるというのがあるのだとか。
ダムに沈んだ村
滝畑ダムに沈んだ村では昔「平家の落人」伝説があります。
「平家の落人」とは源氏と平家とが雌雄を決した源平合戦において平家方が敗退する過程で発生した平家方の落人・敗残兵が各地に潜んだことから様々な伝承が伝えられるようになった。
引用元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
そのため、源氏に見つからないように過ごしていた風習が長らく残っていたのだとか。
目立たたない暮らしを良しとし、鯉のぼりもあげなかったそうです。
憶測ですがこれらの話とかを混ぜてオマージュされたのかもしれません。
— 背筋 (@sesuji0517) March 26, 2023
— 背筋 (@sesuji0517) February 26, 2023
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